2013年3月25日月曜日

第二回路地ゼミ 「時間」のグループ

路地と「時間」に関してディスカッションした結果を報告させていただきます。 「時間」のグループでは、路地を形成している「時間」を表象する要素や背景を抽出し分類しながら、それらの要素がいかに路地の全体像を決定付け得るのかを考察していきました。 

第二回路地ゼミ「時間」グループディスカッションボード

このディスカッションボードは500ほど収集した路地の写真の中から、超短期(一瞬、瞬間、偶発)、短期(2~3時間、一日)、中期(数日)、長期(10~20)、超長期(100)と大まかに範囲を区分した尺度によって、左に向かうほど長いレンジを内包する路地を並べたものです。



例えばこの写真では一匹の猫が路地に座っています。前回の路地ゼミで猫などの動物は本能的に自分の領域を求め裏に潜むとして路地的であるという話が上がりました。猫が座り、しばらくすると立ち去ります。ここに座りくつろぐ猫は路地における短期的要素であると言えます。 



この写真では子供が路地に落書きをしています。ここで路地は子供達の遊び場となり、その落書きは路地を構成する大きな要素となり、2~3日するとだんだん消えていきます。中期的な時間を帯びる要素として分類しました。 




この写真では左下の階段が切り欠かれている部分を抽出しました。 この階段が造成されたとき、住宅かもしくは塀が植木鉢の置かれている赤いエリアまで存在していたが、階段ができた後、立て替えや改築が行われたことによってこの空間が生まれたと考えられます。この階段の切り欠きや、誤差の生んだスペースが決定的にこの路地を性格付けていると思います。 立て替えや増改築の行われる10~20年の時性を帯びる要素として抽出しました。



この写真では下町の長屋風景の背後にスカイツリーが建っています。 スカイツリーの建設によって今後何十年何百年のスパンで大きく風景が激変するはずです。 ここではスカイツリーを超長期的な要素として抽出しています。


このようにそれぞれの要素が帯びる時間を分類してきましたが、自転車や生活道具など短期的要素と建て替え増改築跡など長期的要素が同時に存在し得ることもあります。またその路地は、例えば東京であれば関東大震災や戦後にかけて行われた都市計画、区画整備の履歴の上に在り、細分化と変遷のプロセスによって成り立っています。 
 今回のゼミでは明確な区分によって分類しましたが、路地における或る複雑性とは、短期•中期•長期を現す要素が重層し混在することから発生していると考えられました。

質疑応答では、様々な路地から一つずつ要素を抽出したために、時間軸として並べてはいるが、一貫する要素が存在していないので分かりにくいと言われました。 今後の進め方としては、今回のディスカッションの手法とは逆に、数ある路地の中から1つの路地を選定し、その路地の中に含まれる要素をスケッチ等によって徹底的に抽出し、その要素を時間軸で並べていくというプロセスをとっていくことで一貫性を獲得でき得ると考えます。
 また、一つの路地に入り込んで徹底的に要素を抽出していく姿勢と、長期的な時間を扱う上で、都市という大きなスケールの中における生成過程によって発生した一本の路地という、少し引いて眺める姿勢も「時間」を扱っていく上で重要なのではないかと感じました。 

最後に、これら時間を表象する要素があるから「ここは路地である」ということになるわけではないことを自覚しておかなくてはならないと思います。あくまでそれらの要素が「路地的である」という、ある一定の共通認識とどう関係を持っているかを考察し、掘り下げていかないといけません。
難しいトピックであることは重々承知ですが、今後の路地ゼミでより深く議論を交わしたいと思います。

文責:伯耆原洋太

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